
新型コロナウィルスの新たな変異株オミクロン株が世界中で猛威を奮う中2021年は終わりを告げ、
その脅威も去らぬまま2022年という新たな年を迎えることになりました。
今まで我々の生活において人と人とが直接会って仕事や日常を過ごすのは当たり前のことでした。
しかし人同士の直接の干渉が規制されているこの状況下で今まで通りの仕事や生活をするのは困難になりつつあります。
そんな中で近年話題になっているのが「メタバース」です。
メタバースとは簡単に言えば仮想空間のことであり、メタバースを利用して今までの生活や仕事に活用しようとするニュースを最近非常に多く耳にします。
世界の各企業もメタバースへの取組みを表明するのがトレンドになりつつあり、
そのトレンドの元となったといわれるメタ社(旧フェイスブック)は2021年7月にCEOのマーク・ザッカーバーグが
「フェイスブックの未来はメタバースにある」
と発言し社名をFacebookからMetaに変更。
ザッカーバーグ氏、「メタバース」がフェイスブックの未来の鍵握る https://t.co/a6f4Ld3tYt
— ブルームバーグニュース (@BloombergJapan) July 30, 2021
年間で1兆円規模の投資を行うことを発表し低迷を続けていたフェイスブックの株価は徐々に回復傾向にありました。
ですが2022年2月にはメタバース事業が多額の損失を生んだこともあり株価は急落して今後のメタバースについての見通しは雲行きが怪しくなり始めました。
日本企業でもメタバース事業に積極投資を発表したGREEの株価が徐々に下降傾向にあるなど、
現在メタバースとその関連銘柄の株価はメタバースの世界的な動きに大きく左右される傾向があります。
本記事ではメタバースビジネスが株価にどのような影響を与えるかを焦点とし、いくつかの事例をもとに紹介していきたいと思います。
目次
メタバースが注目されるようになるまでの一連の流れ
まずメタバースがなぜ企業の株価に直結するようになってしまったのかを把握するために、
メタバースが今までどのような経緯で注目されるようになったのかざっくりとその経緯をまとめます。
メタバースの前身「Second Life」の登場
数時間かけて書きました。現状セカンドライフを理解したい方どうぞ #メタバース
— k0sm0s (MM) (VRC) (@k0sm0s_MM) January 15, 2022
最古メタバース、Second Lifeのことを全部理解できるNoteです!|#note https://t.co/QhCBd3AeDD
2007年頃にアメリカのサンフランシスコに拠点を置くリンデンラボ社(Linden Lab)がメタバースの先駆けともいえるSecond Life(セカンドライフ)という仮想空間を開発しサービスを展開しました。
セカンドライフ内で獲得した専用通貨は現実の世界での通貨に換金できるなど当時としては画期的なシステムだったため瞬く間に世界中で流行となりました。
しかし当時はセキュリティ面での不安が多く不正が相次ぎ翌年にはブームは終焉を迎えました。
セカンドライフは事業としては失敗といえる結果に終わりましたが世界中の経営者やエンジニアはメタバースに可能性を垣間見たことでしょう。
ブロックチェーン技術の開発
セカンドライフのブームが過ぎ去った2008年にインターネット上に「サトシ・ナカモト」とい正体不明の人物からブロックチェーンシステムの構築に関するホワイトペーパーが公開されました。
ブロックチェーンとは従来のセキュリティの常識を変えうる可能性を秘めた理論上データの改ざんができない超強固なセキュリティシステムのことです。
当時は信用性も何もないこのホワイトペーパーを相手にする人はほとんどいませんでしたが一部の優秀なエンジニアがこのホワイトペーパーをもとにプログラムコードを作成し徐々にブロックチェーンの技術が確立されていくこととなりました。
仮想通貨の流通
2009年になるとこのブロックチェーンの技術を基盤にした新たな通貨として「ビットコイン」と呼ばれる仮想通貨が誕生し、
翌年の2010年にはビットコインを通貨として換金できる世界で初めての取引所が開設されました。
当時はまだ仮想通貨の信用性が浸透しておらずブロックチェーン技術も世間には知れ渡っていなかったためすぐには
流通しませんでしたがフィンテック(FinTech)の登場が後押しとなり2017年には全世界的に仮想通貨が爆発的に流通し始め「仮想通貨元年」と呼ばれる年になりました。
フェイスブックがメタバース事業に舵取りを行うことを発表
今までその強引な買収手法や個人情報の漏洩、Apple社との確執などにより売り上げが低迷していたフェイスブック社が2021年7月に社名をFacebookからMetaに変更し、メタバース事業に1年間で1兆円規模の投資を行うことを発表し全世界がメタバースに関心を抱くことになっていきました。
メタバースが注目を集めるようになった流れをざっくりとまとめるとこの4つが契機となっているのは間違いないでしょう。
大事なのはメタバースがブームとなったのはつい最近のことでまだまだ未成熟といえる段階であるということです。
ですので今後は様々なメタバースに関する情報が出回り混沌とした状態となっていくことが予測されます。
メタバースを参考に株価や投資判断を行う場合はその点に十分注意して判断しましょう。
メタ社にみるメタバースと株価の関係性
前述でも説明したように現在メタバースの流れを把握するのにメタ社の動きは非常に注目を集めています。
下記の図はメタ社の直近2年間の株価チャートになります。
"引用:Yahooファイナンス"
図の青線は株価の終値、赤線は13週の移動平均線を表しています。
移動平均線とは一定期間の株価の平均値を把握しやすくなるための補助線で基本的に右肩上がりになっていれば上昇トレンド、右肩下がりになっていれば下降トレンドという見方が一般的です。
2020年は新型コロナウィルスが流行し、翌年に経済的に正常に戻った状態のときにFacebookはユーザー数を大きく拡大しました。
2021年3月末時点でネットワーク全体で28億5000万人の月間アクティブユーザー数を獲得し過去最大の数値を記録。
それに連動し徐々に株価は上昇トレンドに入り7月に入るとザッカーバーグがメタバースに注力することを発表しさらに株価は上昇し続けました。
8月に仮想オフィスサービス「Horizon Workrooms」を公開。
9月頃になるとAppleがiOSの更新を行いプライバシー保護強化を実施したことにより、
Facebookの広告収入に打撃を与えたことが発覚し下降トレンドに入りました。
そして今年2月にはメタバース事業への投資の損失が判明し株価は急落している最中です。
メタ社はメタバース事業へ積極投資を行っていることを発表している最たる企業なのでその投資が好調か不調かで株価が左右されやすい側面はあると思いますが、
今後メタバースに参入することを発表する企業の株価を予測するうえで、メタ社の株価のトレンドは必ず把握しておきたいところです。
2022年2月段階でメタバースは少し雲行きが怪しくなってきた雰囲気があります。
マスメディアがメタバースに関する事業の失敗や株価が急落している企業を大きく取り上げているのも原因の一つではありますが、これまでに過剰な期待をされ過ぎたことが最も大きな原因の一つかと思います。
米国の調査会社のガートナー社はメタバースに関する調査結果でメタバースは現在過度な期待をされている状態であり今後必ずその期待が徐々に薄れていく「幻滅期」に入ると予測しています。
2026年までに4人に1人がメタバース利用、ガートナージャパン予測 #SmartNews https://t.co/DRoHyAg8XD
— メタバースおじさん(VRおじさん) (@magurovr) February 10, 2022
仮想通貨も同じように出始めの当初はかなり不安視をされる声を大く耳にしました。
事実最初の仮想通貨であるビットコインが世界で初めて取引を行われてから浸透するまでに約7年の歳月を要しています。
メタバースも浸透するまでにそれくらいの歳月が必要になるかもしれません。
幻滅期を超えることが出来ればあとは「啓蒙期」「安定期」と続くことになります。
メタバースに投資を考えている投資家の方々はその兆候を注意深く監視し、
狭い分野に多額の投資をしてリターンを狙うよりかは幅広く投資をしてうまくリスクヘッジをした方が賢明かと思われます。
今後株価が上がると期待されるメタバース領域
メタバースの利用が現在考えられている分野として主な領域は
情報収集、会議、商談、電子商取引、設計、開発、教育・研修、ゲーム・エンタテインメント
が主要なメタバース領域となります。
この領域にメタバースを活用するのに重要な技術として「デジタルツイン」という技術があります。
デジタルツインとは?
デジタルツインとは現実社会における建築物、自動車、機械、半導体などの設計図をデジタル化して仮想空間上に3D映像として投射する技術のことです。
この技術によって今まで主にゲーム・エンタテインメントの分野で先行していたメタバース関連技術が現実の製造業にも活用できることになります。
設計図を仮想空間上に投射してシミュレーションを行うことが出来れば今までシミュレーションに掛けていた工数やコストを大幅に削減することが可能になり製造業には革命ともなりうるでしょう。
デジタルツインの実用化に向けて投資が最も活発になっている領域としては主にインフラ領域です。
前述でも説明したようにメタバースの構築には従来とは比較にならない規模のデータ量が必要となってきます。
その先駆けとして現在最も投資が盛んになっているのはデータセンターやその基盤となる半導体の領域になります。
実際にメタバースに投資を考えているのならコンテンツ領域に集中投資を行うよりも、
インフラ領域に注目して投資判断を行うのが比較的リスクが少ないといえるでしょう。
コミュニケーションに革命が!?
メタバースの構築によりコミュニケーションにも革命が起こるといわれています。
メタバース内では基本的にアバターと呼ばれる自身の仮想空間内での分身体を使って行動することになります。
このアバターに同時翻訳ツールを実装することでリアルタイムで他の国の言語をよりスムースに理解することが可能となります。
現実の世界でも同時翻訳ツールは様々な種類が実際に市販されていますが、
そのどれもがどうしても翻訳にズレが生じたり間が開いてしまったりとリアルタイムと呼ぶにはあと一歩届かないのが正直な感想でしょう。
アバターに翻訳ツールを実装することでこれらの問題は解決されるといわれています。
これにより言葉の壁は取り払われメタバース空間内では世界の文化の壁は消失し、世界は一つになることが出来るかもしれません。
すると今まで世界にビジネスを展開するうえで最も厄介ともいえる文化の壁を心配する必要がなくなり、
より良いサービスや商品を展開した企業こそが勝利を勝ち取る弱肉強食な世界になることが予想されます。
このような未来での勝利を見据えてアメリカの多くの企業は過去に類を見ないほどの大規模投資を実施しているのでしょう。
まとめ
メタバースと株価の関連性については一概には言えませんが少なくともメタバース事業に注力することを発表した企業は今後メタバース事業の状況が株価に直結する可能性は十分にあるでしょう。
説明したように現在メタバース市場は混沌とした状況になる危険性があり安易に儲けようとして下手に手を出すのは危険な状況だと個人的に考えています。
まずは指標となる企業の選定を行いその企業の株価や動向をしっかりと注視していくことをお勧めします。