
1990年代にインターネットが登場して以来私たちの生活は当時とは比べ物にならないほどに便利で快適になりました。
今や老若男女問わず一人一台スマートフォンやタブレット端末などのインターフェースを持つのは当たり前の時代となり当時と比べて人々の購買活動も多様化を極めています。
一昔前まではショッピングは実店舗まで行って購入したい商品を吟味するのが普通でしたが、今やeコマースやWEBサイト・SNSなどのオンラインメディアを利用して利用して私たちは商品を吟味することが出来ます。
更にはVR/AR(拡張現実)を利用することにより実際の商品を現地まで直接行って確認などしなくとも、実際に商品を確認したような体験を経験することもできるようになっています。
そういった時代の流れに従ってマーケティングもデジタルマーケティングを基本に考えることがスタンダードになりつつあります。この記事ではマーケティングが迫られるデジタルトランスフォーメーション(DX)の今と今後についていくつかのトピックを紹介しようと思います。
最後まで読んで頂ければデジタルマーケティングの今とその基本が理解できると思います。
目次
そもそもマーケティングとは?
マーケティングの大家ともいうべき3人はマーケティングの定義を以下のように語っています。
①フィリップ・コトラー
「市場のニーズを知り、価値を生み出し顧客に届け、利益を上げること」
②セルジオ・ジーマン
「商品をより多く販売し、より多くの利益を上げること」
③ピーター・ドラッカー
「販売を不要にし、商品が自然に売れるようにすること」
マーケティングについてあまり詳しくない人はマーケティングを「リサーチ・情報収集」「販売」のようなイメージで理解していることが多いように感じますが、
実はマーケティングに正確な定義はありません。
一般的には上に挙げた3人の大家の定義で理解されていてその最終目標は「売れる仕組みづくりをすること」です。
リサーチ・情報収集や販売などはマーケティングプロセスの一部であってマーケティングそのものを理解するにはほど遠いものになりますのでご注意ください。
代表的なマーケティング手法
代表的なマーケティング手法でよく挙げられるもので以下の4つがあります。
マス・マーケティング
マス・マーケティングは大量の消費者(マス)をターゲットにしたマーケティングで、
メディアはTV・新聞・雑誌・ラジオなどの比較的昔からあるようなものを利用しています。
現在ではターゲットの幅が非常に広いため売上のためではなくどちらかといえばブランディング施策として使用される傾向が強いです。
また大手広告媒体と契約する必要があるためコストが高くなってしまいます。
ダイレクト・マーケティング
ダイレクト・マーケティングは仲介業者を挟まずに消費者に直接(ダイレクトに)売り込むマーケティングです。
例えばネットの広告などで「今ならお試し100円で!」というような手法と言えば想像しやすいかと思います。
メディアはネット広告・DM・折込チラシなどを利用することになります。
一つの販促手法の投資に対してどれだけの利益を上げられたのかが数値で把握できるため非常にわかりやすいのが特徴です。
また基本的に単一の手法に対しての費用対効果には一定の基準値ががあるため多く利益を得ようとすればするほど投資金額も嵩むのでコストも比較的高めです。
インバウンド・マーケティング
インバウンド・マーケティングは専門的なコンテンツを発信してユーザーに見つけてもらうマーケティングです。
イメージとしては大きな罠(コンテンツ)を設置して獲物がその罠に引っかかるのを待つイメージです。
受け身な姿勢のマーケティングなのでプル型マーケティングともいわれています。
メディアは大手検索エンジンやeコマース・SNSなどのオンラインコンテンツ全般です。
先に挙げたマス・マーケティングとダイレクト・マーケティングは実施するのに多額の用紙予算が必要でしたが、
インバウンド・マーケティングは工夫によっては初期費用をかなり低く抑えられることが出来るため中小企業などで採用される傾向が強いです。
アウトバウンド・マーケティング
アウトバウンド・マーケティングはインバウンド・マーケティングの対と考えていいでしょう。
イメージとしてはインバウンド・マーケティングが罠を設置して待つ受け身なマーケティングだったのに対し、
アウトバウンド・マーケティングは自信で作った武器(コンテンツ)をもとに獲物を捕まえに行くプッシュ型マーケティングのイメージです。
短期間で大きな母集団を獲得できる可能性があるのがメリットですが担当者の手腕によって結果が左右されやすく、
人件費なども短期間で多くの出費をせねばならないのでコストもインバウンド・マーケティングに比べて比較的高くなります。
他にもマーケティング手法は数多く存在しますが代表的なものと言えばこの4つかと思います。
しかし現在では消費者の購買行動は多様化し従来のマーケティング手法だけでは対応しきれなくなる場面が生じています。
例えばマス・マーケティングはそのメディアをTVやCMなどに頼っているためWEBメディアなどから流入してくる顧客には対応できません。
このような消費者の行動の多様化に対応するために注目されているのがデジタルマーケティングです。
デジタルマーケティングとは?
デジタルマーケティングは今までオンライン/オフラインで分かれていたマーケティング手法を包括し、
全ての顧客のケースに対応できるような「オムニチャネル」という考え方を通じ、あらゆるデジタルツールを用いて顧客との接点を作っていくマーケティング手法全般を指します。
またデジタルマーケティングではオムニチャネルを通じたPRだけではなく、
マーケティングプロセスを通じて得られた莫大な量の顧客の行動データ(ビッグデータ)をAIや機械学習などを利用して分析します。
そのようなビッグデータをAIや機械学習を通して解析するため、
従来の人間が行う解析よりもはるかに高い精確性と信頼度が担保されています。
デジタルマーケティングの活用事例
デジタルマーケティングはどのような場面で活用されているのでしょうか。
ここではいくつかのデジタルマーケティングの活用事例を紹介しようと思います。
日産自動車のケース
日産自動車は商業施設内に設置した簡易店舗によるプロモーションによりどのくらいの顧客が実際に近くの販売店舗に流入しているのかを数値化したいという目的がありました。
今までは店舗のベテラン営業の勘や店舗同士の連携により効率よく販売につなげていたようですが、
実際の送客効果を可視化することで簡易店舗と販売店舗にどれくらいの人員を配置すればいいのか、
またはどちらの店舗に投資を行った方がより効率的に契約につながるのかを全て数値化し可視化することでコスト削減と従業員の士気向上を狙いたいと思惑があったようです。
実施施策としては独自にリアル顧客分析ツールを開発し各店舗にWi-Fiを設置し顧客の行動データを集積することで顧客が「いつ」「どのタイミング」で購入の判断をするのか、
また効率的に販売店舗に送客するためにはどのような点が顧客にとって重要なのかを独自のKPIを設定することで数値化し可視化することに成功し元々の思惑通りの効果を得ることに成功しました。
アンリツ株式会社
電子計測器などの製造・販売を事業として展開しているアンリツ株式会社は従来から導入していたMAツール(マーケティングオートメーションツール)が使いこなせておらず、
マーケティングによって立案した戦略をうまく実際の営業活動に反映できていませんでした。
またマーケティング施策として商品の展示会やセミナー・メルマガなどを顧客に対し提供していましたが、
どの筐体がどの程度売り上げに反映しているかを把握できていませんでした。
実施施策としてはデジタルマーケティング専門企業にマーケティング事業を依頼し、
新規のMAツール(マルケト)を導入し現CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)と連携をしました。
そして新MAツールの仕様をマーケティング担当者にもしっかりと研修を行い自社データとMAツールによって集積されたデータを複合させたマーケティング戦略を立てられるよう方向転換をしました。
またMAツールのスコアリング機能によって各媒体の費用対効果の分析も行いました。
結果としては新規潜在顧客数が1.7倍に増加し数値化された顧客の行動データをもとに顧客のより正確なニーズを把握することでマーケティング戦略立案に割く時間と人員が大幅に減少しました。
そのコスト削減分を自社製品の開発にあてることでより高品質な製品を開発することに着手することが可能となりました。
株式会社ブイキューブのケース
株式会社ブイキューブはWEB会議システムやセミナー向けの動画配信サービスなどのサービスを提供しているテレワーク事業専門企業です。
ブイキューブはオウンドメディアを100種類以上保有していましたが数が増えすぎたこともあり、
その管理と費用対効果を正確に把握しオウンドメディアのリード数(見込み客)を増やしたいという目的がありました。
実施施策としてはデジタルマーケティング専門企業MOLTに依頼してコンサルティングをしてもらうことにより、
保有オウンドメディアの役割を1つ1つ明確化しその費用対効果などを可視化することにより各コンテンツのスマート化を図りました。
結果としてはリード数と受注化率が当初の目標通りの3倍を達成しSEO施策でも35ものキーワードで検索上位1位を獲得することに成功しました。
これらの成功例から読み取れるのはデジタルマーケティングによって最も大事なのは「可視化」ということです。
デジタルマーケティングが登場以前のマーケティングでは顧客の行動や流行・習慣などは担当者や対応したベテラン営業などの勘に頼っていた部分もあったのが現状でした。
しかしAIや機械学習・RPAなどの技術の発展によって従来抽象化されていた部分を数値として理解することが可能になりました。
今後期待されるデジタルマーケティング領域
【IT調査会社IDC Japanプレスリリース】
— IDCJapan株式会社 (@IDCJapan) December 21, 2021
国内デジタルマーケティング関連サービス市場予測https://t.co/s4LmrNhfQ1 pic.twitter.com/GbF2LQVRqn
昨年12月にIT専門調査会社IDC Japan株式会社はデジタルマーケティング領域の2020~2025年度までのセグメント別/産業分野別の市場予測を発表しました。
その中で2020年度のデジタルマーケティング関連事業の市場は4,305億円(前年比2.6%増)となり2025年度までの年平均成長率は7.2%ほどの伸び率で推移していくと予想しています。
中でもマーケティングプラットフォームの導入・周辺システムとの連携開発・データ統合などの需要が最も大きく市場を支えた要因となりました。
産業部門別では金融部門が全体の3割弱、次いで製造・流通と続きます。
この調査報告から読み取れるのはデジタルマーケティング事業は少なくとも2025年度まで需要は高まり続け、
現在大手企業を中心としてデジタルマーケティングのためのプラットフォームの導入やデータ管理・既存システムとの連結などのDXが急務とされているということが予測できます。
また現在このようなデジタルトランスフォーメーションはIT分野に惜しみなく投資をできる大手企業を中心に進んでいますが近いうちに中小企業でもこのような局面に立たされることが予測されています。
アメリカを中心に現在メタバース事業(仮想空間事業)に対し過去に類を見ない規模での投資が進められている中、アメリカのITアドバイザリ企業のガートナージャパン株式会社は2022年2月にメタバースに関する今後の展望を発表しました。
2026年までに4人に1人がメタバース利用、ガートナージャパン予測 #SmartNews https://t.co/DRoHyAg8XD
— メタバースおじさん(VRおじさん) (@magurovr) February 10, 2022
その発表によると
「2026年までに人類は1日の1時間以上をメタバース空間で過ごすことになる」
と発表しています。
また同企業のバイスプレジデント兼アナリストのマーティ・レズニック(Marty Resnick)氏は
「教育・不動産・ショッピングなどのメタバースの利用が検討されているあらゆる分野はメタバース空間の中で行われ、2026年までに世界の企業の約30%はメタバースビジネスを利用したサービスを提供することになる。」
と示唆しています。
この予測が正しければもはや大手・中小問わずデジタルマーケティングまたはその利用のためのプラットフォームの導入などのDX化は必須となってくるでしょう。