近年、スーパーカー市場は右肩上がりに成長を続けている。スーパーカーの王道であるフェラーリの日本での販売台数は3年連続で右肩上がりである。
ランボルギーニの年間生産台数は10年前の4倍近くにまで成長した。少量生産のメーカーでは需要に追い付かず、販売する新車が無い状況だ。
各社は新型車を続々と発売し、スーパーカー市場の成長に拍車をかけている。また、億単位の限定車も次々と発売されている。
盛り上がりを見せているのは新車だけではなく、クラシックモデルも例外ではない。
株や絵画、宝飾品、時計よりも投資価値が上がっているなどと言われ、ここ10年で5倍以上になったモデルも存在する。ある調査では、2017年までの高級クラシックカーの取引価格は300%以上上昇したデータもある。
このようなスーパーカー市場には一体どんな背景があるのだろうか。
目次
スーパーカーが選ばれる理由
現在のスーパーカー市場の背景のひとつに、買える人が増えたことが挙げられる。
資産が10億ドル以上を持っているビリオネアの数は10年前の2倍となっており、資産100万ドル以上持つミリオネアの数も毎年右肩上がりで増えている。
日本だけを見ても資産1億円以上の富裕層、超富裕層の数は2013年以降右肩上がりが続いている。こうして、スーパーカーのマーケットが広がっているのだ。
なぜスーパーカーが選ばれているのだろうか。
スーパーカーは市場価値が下がりにくい。特に限定車などの手に入りにくいモデルであれば、新車よりも市場価値が高くなることがほとんどだ。
更に、先述した通りクラシックモデルが軒並み高騰していることも将来のスーパーカーの市場価値への期待を押し上げている。
将来の資産価値に期待ができて、所有満足度を満たし運転を楽しめるのだから投資対象にもなっているのだ。
市場価値が高いスーパーカーを新車で購入する方法
実は市場価値が高くなるスーパーカーは購入資金があるだけでは手に入らない場合がある。メーカーは投機対象として購入は極力防ぎたいからだ。
そのため、メーカーは購入できる顧客の制限や、購入希望者の中から顧客の選別を行う。こうして、ブランド価値を守っているのだ。
フェラーリの場合
フェラーリはスーパーカー市場の模範と言われるマーケティングを展開している。
フェラーリには顧客のランク制度があり、ランクは主にフェラーリの購入歴や車の使い方で決まる。
通常モデルはランクに関係なく購入できるが、一部の特別なモデルにはフェラーリの定める基準を満たしていなければ購入の権利は与えられない。
フェラーリの中でも特にハイパフォーマンスなモデルである488ピスタはその1台だ。
その条件とは、488ピスタのベースモデルである488GTBとV8エンジンモデル、そしてXXモデルやチャレンジモデルなどのレーシングカーを含む5台以上の購入歴があることであった。
488ピスタは限定生産モデルでは無いが、新車で購入することが難しいこともあり中古車市場では新車価格を大きく上回る価格で販売されている。新車価格は4036万円に対し、中古車では5160万円から9985万円で販売されている。
ベースとなった488GTBは新車価格が3070万円に対し、中古車市場では2500万円から3600万円の値段がついていることからも488ピスタの市場価値が高くなっていることが伺える。
限定車として2016年に発売されたラ・フェラーリにも購入審査があった。
このモデルは499台の限定車である。このモデルの購入の条件は2年以上所有した458スペチアーレを含む5台以上の購入歴が必要だ。
ラ・フェラーリは新車価格の1億6000万円に対し、オークションでは7億円を超える価格で落札されている。審査が厳しいことに加え、生産台数が限られているため市場価値が高くなった。
この色もいいなぁ🤤
— きむてつ!車好き (@kimutetsu718) February 10, 2022
ローマカッコいい🤤 #Ferrari pic.twitter.com/kzpTolZ8Dq
フェラーリの中でも特に市場価値の高い特別なモデルを購入するには、フェラーリの購入実績を重ねる必要がある。
フェラーリの購入実績を重ねると、顧客のランクを駆け上がることができる。すると、特別なモデルの購入を打診されるようになり、紹介したような特別なモデルに辿り着くことことができるのだ。
特別なモデルに辿り着くことができれば、買った途端に市場価値は上がるので容易に特別なモデルを乗り継ぐことができるようになるというわけだ。
また、この顧客ランクを上げるには愛車をガレージで保管しているだけでは好ましくない。積極的に乗ることも必要だ。
フェラーリ主催のサーキットイベントやツーリングイベントに参加し、SNSで発信するオーナーは評価される。そのため、フェラーリでレーシングカーを購入し、サーキットイベントに参加しているオーナーは上位ランクに位置している。
このシステムは、フェラーリにとってはブランド力の維持や他社へ顧客が流れることを阻止できる。顧客にとっても買うほどにメリットが大きくなっていく。
このマーケティングによって、フェラーリはスーパーカー市場を席捲した。
ランボルギーニの場合
限定車が発表される段階では既に生産予定台数全ての行く先は決まっている。
ランボルギーニが発表前に事前にオーナーになってほしい購入実績の多い顧客に招待状を送っているのだ。
例えば900台限定で発売されたアヴェンタドールSVJの場合はアヴェンタドールSを買っている顧客に購入権が得られた。
新車価格は5155万円だったが、海外市場では1億円以上で取引がされている。
マクラーレンの場合
マクラーレンは通常モデルであっても購入するにはイギリスの本社の審査を通過する必要がある。他社ブランドにもこのような審査はあるが、マクラーレンは特に厳しい。
マクラーレンの顧客審査を通過するには、年収や社会的地位に加えて、過去にマクラーレンのモデルを所有歴があることが求められる。そのため、最初の1台目の購入に対しては敷居が高い。
限定車ともなるとさらに購入は難しくなる。
375台限定で発売されたP1は、過去にF1の所有歴がある顧客が優先的に購入できた。
限られた顧客にしか販売されなかったP1は新車価格の1億円に対し、中古車市場では1億8000万円で販売された。
さらに、マクラーレンの中には購入に運転技術の審査を必要としたモデルがある。それが1991年に発売されたF1である。運転席が中央にあるのが特徴的なモデルである。
この車は、イギリスの専用サーキットでマクラーレン社員同乗で運転技術の審査を受け合格した顧客にのみ購入が許された。生産台数は106台で、1億8000万円で発売された。
F1が市場に出回るケースは非常にレアだが、過去には20億円を超える価格で落札されている。
フォードの場合
フォードからも購入審査が必要なスーパーカーが発売されていた。
2017年に発売された1350台限定生産のフォードGTだ。
購入希望者の中から過去のフォードGTの所有歴の有無や、フォードの所有歴、スーパーカーの運転頻度、購入の熱意を調査し選ばれた顧客のみが、購入を許された。
購入者のうち、6割以上が過去にフォードGTの所有歴があったと言われている。
新車販売価格は4300万円だったが、オークションでは1億4000万円以上で落札されている。
トヨタ2億円のスーパーカー
トヨタ1400馬力のハイパーカー「GRスーパースポーツ」、購入希望者の条件が明らかに!https://t.co/n6agpw4UcI pic.twitter.com/wsnjCxVHCe
— レスポンス (@responsejp) March 8, 2021
今後、日本メーカーからも購入審査をして販売するスーパーカーの登場が予告されている。それが、トヨタが現在開発中のGRスーパースポーツである。
このモデルはレース参戦予定車両でレースの規定である20台以上の生産を満たすために発売される。
レース参戦車両ではあるが公道走行も可能だ。20台のみの限定発売の予定で価格はおよそ2億円と言われている。
購入審査内容は既に公開されている。
審査内容には、ハイパフォーマンスカーの所有台数や購入予定のスポーツカー、2000GTかLFAの所有歴の有無といった所有歴に関する項目に加えて、サーキット走行の頻度やモータースポーツライセンスの有無などの運転技量も審査項目に含まれる。
ガレージに眠らせるのではなく、サーキットで性能を発揮してくれるオーナーに届けたいというメーカーの意思が伝わる内容だ。
この条件から察するに2000GTかLFAのオーナー、レースで活躍しているような方々には既に購入の案内が来ているのではないだろうか。
日本車の中でもトップクラスに手にすることが難しいモデルになることは間違いない。GRスーパースポーツは2000GTやLFAを超えるような市場価値がつく可能性が非常に高い。
ホンダ NSXタイプS
ホンダはNSXの最終モデル「タイプS」の先行情報を公開。
— Mrくるま (@Mr_Kuruma) August 2, 2021
このタイプSは2代目NSXの集大成として全世界で350台、そのうち日本の割り当ては30台を販売するとのこと。
そしてNSXはこのタイプSをもって、2022年12月に販売終了となります。 pic.twitter.com/sPUQDy2cI1
ここまでは紹介してきた市場価値の高いスーパーカーは、審査が厳しいモデルだったが誰でも平等に購入可能なモデルも存在する。
ホンダ NSXタイプSはその1台だ。
2021年に生産終了に合わせて350台限定で発売され、日本でも30台限定で発売された。価格は2794万円だ。
日本での販売方法は販売店ごとに台数が割り当てられ、販売店ごとに抽選が行われ当選した購入希望者に購入権が与えられた。店舗によっては、倍率が100倍を超えたそうだ。
抽選はくじ引きで行われ、その様子はYouTubeで配信された。抽選に申し込んだ顧客はその様子を見て、ドキドキした臨場感が味わえたに違いない。
まだデリバリーは開始されておらず1年間は売却禁止のため市場に出回るのは先になる。しかし、NSXの最終モデルの限定車であることから、今後市場価値が高くなる可能性は非常に高い。
日産GT-R Tスペック
R35 GT-R Tスペック
— まるるん@クルウチ博物館館長 (@manmarurunrun) September 15, 2021
かっこよかった😍 pic.twitter.com/UoSxX7vyM8
日産GT-Rの特別仕様車Tスペックも台数限定でありながら、購入資金さえあれば購入する権利が平等に与えられたモデルだ。
GT-R は、2022年モデルは既に生産終了しており、2023年モデルは騒音規制をクリアできないため実質的な最終モデルとなる。
生産台数は合計で200台であり、購入者は抽選で選ばれた。倍率は20倍以上であった。
GT-Rは元々、市場価値が高いモデルだ。今後、新車で手に入らなくなればGT-R自体の相場が上がることも十分に考えられる。
すると、Tスペックは限定生産であることや抽選の倍率を考慮すると市場価値が上がる可能性が高いモデルだ
限定モデルでも審査や抽選が無く、限定生産が行われ市場価値が高まっているスーパーカーも存在する。
ポルシェ918スパイダーがその1台だ。
2013年から2015年までに918台限定で受注生産されたハイブリッドスーパーカーだ。
新車価格はおよそ1億円であった。中古車市場では1億7000万円で落札されている。
EVスーパーカー
レクサス、次世代EVスーパーカーの映像公開…LFAの走りを継承https://t.co/p3zl0bRyym
— LEXUS NEWS (@LEXUS___NEWS) February 14, 2022
レクサスの未来を象徴するモデルに位置付けられ、0~100km/h加速は2秒台前半、航続は700km以上、全固体電池の搭載も視野に高性能EVの実現を狙う! pic.twitter.com/cUXQSdkl4p
はじめから投資目的のみでスーパーカーを購入することは推奨されることではないが、資産を減らさずに魅力的なモデルを所有できるスーパーカーの持ち方は車好きにとっては魅力的だ。
さらに、GT-Rが生産を終了したように今後はガソリンエンジンのスーパーカーは生き残るのが難しくなる。
騒音規制も年々増しているので、スーパーカー特有のいい音を奏でることができるのも今がラストチャンスだ。
フェラーリやマクラーレン、ランボルギーニは電動モデルの開発を進めており、既にランボルギーニやロータスはガソリンのみで駆動する最後のモデルを発表している。フェラーリは2025年に完全電動車を発売する計画だ。
電動化が本格的に始まり、ガソリンで駆動するモデルが新車で購入できなくなれば今日のスーパーカーの市場価値は更に高くなることが予測できる。
純粋なガソリンエンジンを楽しみたい方はこの機会にスーパーカーを手にして欲しい。